前代未聞?ツール・ド・九州2024の全選手モニタリング&データ連携を1か月で実現
2024年大会に向け事務局の皆様と準備を進める中で「ツール・ド・フランスで実現されている全選手の追跡を、ツール・ド・九州でも実現できないか」との構想がありました。コア技術は確立されていたのですが、選手のロードバイクに取り付けられる適切なハードウェアが見つからず、なかなか具体化しませんでした。
主な条件は「軽量であること、数秒間隔でSIM通信が可能であること、数時間バッテリーが持つこと、100台以上のハードウェアを確保できること」であり、 2024年7月初旬になっても要求を満たす製品が見つかりませんでした。
そのような状況の中、見つけた製品がHAWKCAST(N-sports様)です。HAWKCASTが最も適したデバイスだと確信し、事務局様からN-Sports様(HAWKCASTを扱っている企業)にコンタクトを取っていただきました。何度かの検討会の後、HAWKCASTによる全選手追跡が可能だとの見通しが立ちました。
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(出典元)HAWKCAST公式ページ

HAWKCAST紹介ページ(外部リンク)
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開発開始までの準備と連携
契約関係の確認を経て、実装作業が開始できたのは8月中旬でした。選手の位置情報提供およびYouTubeでの位置情報配信はN-Sports様が担当、弊社はその位置情報データを受け取り、走行距離や順位などの情報を付加する役割を担いました。同時に、車両位置情報と選手位置情報を統合して地図上に表示するシステムの開発を進めることになりました。
時間は限られており、データ取り込み、距離計算、地図表示といった作業が山積していました。N-Sports様からテスト用機器をお借りして検証を始められたのは8月末頃、とにかく時間との闘いでした。
距離計算と周回の課題
デバイスとの接続・システムでの表示は比較的スムーズに成功しました。
開発陣を悩ませたのは「あと何kmでフィニッシュか」を計算する距離測定・表示機能でした。コースが一本道であればシンプルですが、周回区間が含まれる場合、ラップ数を把握しして周回内の距離に反映する必要があり、急激に複雑さが増します。
さらに、通信障害などで位置情報が途切れる可能性も考慮しなければなりません。周回コースでは同じ位置が複数回記録されるため、正確に何周目かを判定することが難しいです。
スタートからのデータが完全であれば問題ないのですが、データが抜けた場合には補正処理が必要です。このプロセスをリアルタイムで行うためには、処理速度の最適化も求められました。

実現した成果と課題
いくつかのトラブルはありつつも、大会本番ではシステムを正常に持っていき、無事に選手追跡に成功しました。
いっぽう距離データの算出については、ロジックの未熟さや一部のエリアでの電波状況の悪さにより、完璧に提供することは叶いませんでした。しかし大会関係車両と全選手の位置情報を地図上に表示することで、大会全体を俯瞰する貴重な情報を提供することができました。このシステムは、運営の効率化や迅速な対応に役立ったと評価されました。
全選手の追跡を実現したN-Sports様の技術力と協力に深く感謝するとともに、今後さらに改善を図り、より精度の高いシステムを目指していきたいと考えています。
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